嫌がらせを自力で解決する前に知るべき5つのリスクと成功の3つの条件

「嫌がらせを自分で解決したい」 

そう考えている方も多いのではないでしょうか。

実際、当事務所に相談される方の約7割が「最初は自分で解決しようとした」とおっしゃいます。

 探偵に依頼せず、自力で解決できれば一番良いですよね。

この記事では、自己解決を成功させるために必要なポイントと、事前に知っておくべきリスクについて解説します。

自己解決を目指す方にとって、判断材料となる情報を客観的にお伝えします。

自己解決の5つのリスク

嫌がらせ調査に限ったことではありませんが、探偵業の資格を持たない一般の方が調査を行う場合、法的・物理的なリスクが伴います。

「知らなかった」では済まされない深刻な問題に発展する可能性もあります。

この章では、自力調査を検討している方が必ず知っておくべき5つのリスクを解説します。

プライバシー侵害で逆に訴えられるリスク

嫌がらせの犯人を特定しようとして、相手を尾行したり監視したりする行為は、プライバシー侵害に該当する可能性があります。

例えば、犯人と思われる人物を尾行して行動パターンを調べたり、その人物の自宅や職場を撮影したりする行為です。

他にはSNSなどから個人情報を収集したり、知人に聞き込みをしたりすることも、プライバシー侵害として問題になる可能性があります。

探偵業法に基づく届出をしている探偵は法律の範囲内で調査を行いますが、素人が感情的になって行動すると、思わぬ法的トラブルに巻き込まれる危険性があります。

被害者なのに加害者として法的責任を問われるという結果になることを理解しておきましょう。

ストーカー規制法違反で逮捕されるリスク

犯人を特定するための繰り返しの接触や執拗な監視は、ストーカー規制法における「つきまとい行為」と見なされる恐れがあります。

自分は被害者だという意識があっても、最悪の場合は逮捕される可能性があるのです。

例えば、何度も同じ場所での待ち伏せ、相手の自宅周辺の徘徊、証拠を掴むための繰り返しの接触などが該当します。

違反すると6月以下の懲役または50万円以下の罰金、禁止命令違反の場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。

自分では「証拠集めのための正当な行為」と思っていても、相手や第三者から見れば「執拗な付きまとい」と判断される可能性があります。

犯人に気づかれて被害が悪化するリスク

素人による調査は、プロと比べて格段に相手に気づかれやすいという問題があります。

尾行や張り込みには専門的な技術が必要で、一般の方だとすぐに不審な行動として察知されてしまいます。

調査していることが犯人に気づかれると、まず証拠隠滅が行われる可能性が高くなります。

それまでの嫌がらせの痕跡を消去され、今後の立証が困難になってしまいます。

さらに深刻なのは、嫌がらせがエスカレートしたり、報復行為を受けたりするリスクがあります。

調査のつもりが、かえって状況を悪化させてしまうという本末転倒な結果になることがあります。

証拠が裁判で認められないリスク

せっかく時間と労力をかけて証拠を集めても、それが裁判で認められなければ意味がありません。

素人が収集した証拠は、法的な要件を満たしていないことが多く、裁判では証拠能力を否定されることがよくあります

例えば、違法な手段で収集した証拠は「違法収集証拠」として排除されます。

また、撮影日時や場所の記録が不正確だったり、改ざんの可能性を完全に否定できない証拠も、信用性が低いとして採用されません。

デジタル写真や動画も、メタデータの管理が適切でなければ、証拠として認められない可能性があります。

「これは決定的な証拠だ」と思っても、法的な観点から見れば不十分ということはよくあります。

結果として、苦労して集めた証拠がすべて無駄になる可能性があります。

警察が動いてくれないリスク

警察に被害届を出しても、証拠が不十分だと判断されれば、積極的な捜査は期待できません。

警察は限られた人員で多くの事件を扱っているため、証拠が明確でない案件については優先順位が低くなってしまいます

素人が集めた証拠では、犯人の特定や犯罪の立証が困難と判断されることが多く、「民事不介入」として扱われるケースも少なくありません。

特に、器物損壊や迷惑行為などの軽微な事案では、よほど明確な証拠がない限り、警察は積極的に動いてくれません。

結局、多大な時間と労力を費やしても、最終的な目的である「犯人の特定と処罰」が達成できないという結果に終わることがあります。

自己解決を成功させる3つのポイント

リスクを知ったうえで「自分で解決したい」という方もいらっしゃると思います。

ここでは自己解決を成功させるための3つのポイントをお伝えします。

機材にこだわること

当然のことですが、経験や技術が不足している分を機材でカバーする必要があります。

多くの方は「スマートフォンで十分だろう」と考えがちですが、実際にはスマホでの撮影には大きな問題があります。

それは、スマホを構えて撮影する姿は、誰が見ても「撮影している」ことが明白だということです。

これは犯人に気づかれやすく、証拠隠滅や報復のリスクが高まります。

探偵はスマホで撮影することはほぼありません

さらに、スマホのズーム機能には限界があり、遠距離からの撮影が困難です。

暗い場所での撮影も不鮮明になりがちで、決定的な瞬間を逃してしまうことも多々あります。

自力で証拠収集をするなら最低限でも以下の機材は揃えていきたいところです。

機材費用
一眼レフカメラ30万円
望遠レンズ10万円
その他(SDカード、三脚、予備バッテリーなど)5万円
合計45万円

遠距離からでも鮮明な証拠写真を撮影できるカメラは最低1台は用意しておきたいところです。

ただし、高額な機材を揃えても、使いこなすには相応の練習が必要であることも忘れてはいけません。

変装をすること(車両も含む)

調査において最も重要なのは、顔がバレないことです。

一度でも顔を覚えられてしまえば、その後の証拠収集はほぼ不可能になります。

特に1人で調査をする場合は、徹底した変装と車両の工夫が必要になります。

用意しておきたい変装グッズは以下です。

項目費用
キャップ(複数)5,000円
伊達メガネ(黒縁、茶縁など複数)5,000円
パーカー(色違いで複数)1万円
ウィッグ(髪型を変える)3万円
カバン(ビジネスバッグ、リュックなど)1.5万円
合計6万円

同じ場所に何時間も立っていれば、周囲の住民から不審者として通報される可能性もあります。

張り込み場所にも注意を払うことを忘れないようにしましょう。

車両についても、自分の車を使うのは非常に危険です。

ナンバープレートから身元が特定され、逆に個人情報を握られてしまう恐れがあります。

そのため、レンタカーの利用が必須となります。

車両(レンタカー)費用:1日1万円 × 14日間 = 14万円

ただし、1人で運転しながら尾行や撮影を行うのは、非常に困難です。

運転に集中していると撮影のタイミングを逃し、撮影に気を取られると事故のリスクが高まります。

運転中の撮影はなるべく控えるようにしましょう

確証バイアスを自覚すること

自己調査の最大の落とし穴は「思い込み」です。

被害者である当事者は、冷静な判断ができません。

この「思い込み」の正体は、心理学で「確証バイアス」と呼ばれるものです。

確証バイアスとは
自分の信念や仮説を支持する情報ばかりを集め、それに反する情報を無視してしまう心理的傾向のことです。

嫌がらせ調査における確証バイアスの典型例

「犯人はあの人だ」と決めつけてしまうケース

  • 特定の人物を犯人と思い込み、その人の行動ばかりを監視してしまう。
  • その人物の無実を示す情報があっても、それを見落としたり、意図的に無視したりしてしまう。

都合の良い解釈をしてしまうケース

  • 相手が自分を見て笑った → 嫌がらせを楽しんでいる証拠だ
  • 相手が家の前を通った → 様子を見に来た証拠だ

実際には、単なる偶然や別の理由があることも多いのです。

特に怒り、恐怖、不安などの強い感情に支配されていると、論理的な思考が困難になります。

さらに、当事者であるがゆえに、第三者の視点で客観的に状況を見ることができません。

興味深いことに、「自分は客観的だ」と思っている人ほど、実は主観的である可能性が高いという研究結果もあります。

これを「バイアスの盲点」と呼び、誰もが陥る可能性がある心理的な罠なのです。

確証バイアスの影響を最小限にするためにも事実だけを記録する癖をつけましょう。

ただし、対策をしても確証バイアスを完全に排除することは不可能です。

だからこそ、「自分は必ず思い込みをしている」という前提で、常に自分の判断を疑いながら進めることが重要なのです。

どちらを選ぶ?自力解決のメリット・デメリット

ここまで読んで、自力解決の大変さを感じた方も多いと思います。

それでも自力解決には探偵に依頼することでは得られないメリットもあります

最終判断の参考として、メリット・デメリットを整理してお伝えします。

自力解決のメリット

いつでも、何度でも調査できる

自力解決の最大のメリットは、時間の制約がないことです。

探偵に依頼する場合、契約期間や調査時間に制限がありますが、自分で行う場合はそうした制約から解放されます。

早朝でも深夜でも、思い立ったときにすぐ行動できます。

週末や休日を利用して、自分のペースで調査を進められるのも大きな利点です。

また、新たな手がかりを見つけたら、すぐに追加調査を行うことも可能です。

何か気になることがあれば、納得いくまで何度でも確認できます。

自力解決のデメリット

機材費用は安価ではない

先述の通り、証拠として使える水準の調査を行うには、最低でも65万円程度の初期投資が必要です。

品目費用
機材45万円
変装・車両20万円
合計65万円

これは決して安価とは言えない金額です。

さらに、調査が長期化すればレンタカー代などの追加費用もかさみます

最終的に専門家に依頼するよりも高額になってしまうケースも少なくありません。

リスクがある

自力解決には、先に述べた5つのリスクが常につきまといます。

法的リスク(プライバシー侵害、ストーカー規制法違反)は、あなたの人生を大きく狂わせる可能性があります。

前科がついてしまえば、仕事や社会生活にも影響が出るでしょう。

また、犯人に気づかれて被害が悪化するリスクも深刻です。

せっかくの努力が裏目に出て、より危険な状況に陥ることもあります。

そして最も辛いのは、これだけのリスクを背負っても、証拠が認められず、問題が解決しない可能性があることです。

実は探偵に依頼した方が安くなるケースも多い
当事務所の調査料金は、ケースによって異なりますが、平均30万円前後です。
調査料金はご依頼内容によって変動しますが、探偵に依頼した方が安いケースがあることも覚えておいてください。

まとめ|メリット・デメリットを理解して最良の選択を

ここまで、自力解決のリスク、成功のためのポイントをお伝えしました。

自力解決という選択は、決して「間違い」ではありません。

時間の制約なく、自分のペースで調査できるという大きなメリットがあることも事実です。

ただし、それと引き換えに背負うリスクと費用は、決して軽いものではありません。

もう一度、整理してみましょう。

自力解決を選ぶ場合

  • 初期費用として最低65万円が必要
  • 法的リスク(逮捕・損害賠償)を背負う
  • 被害が悪化する可能性がある
  • 証拠が認められない可能性がある
  • しかし、時間の制約なく何度でも調査できる

探偵に依頼する場合

  • 費用は30万円程度は必要
  • 法的リスクを回避できる
  • 複数人体制で効率的な調査が可能
  • 第三者の客観的な視点で証拠収集
  • ただし、契約期間内での調査となる

どちらを選ぶかは、あなた次第です。

大切なのは、感情的にならず、冷静に状況を見極めることです。

一度立ち止まって、本当に自力解決があなたにとって最良の選択なのか、じっくりと考えてみてください。

自力解決であっても、専門家への依頼であっても、あなたが一日でも早く、苦しみから解放されることを心から願っています。

もし探偵に相談するか迷っているなら、以下の記事もおすすめです。